こんにちは!
ひめたろ🐶です。
今回は、微小血管減圧術(Microvascular Decompression:MVD)について解説します!
脳神経外科では、

・顔の片側がピクピクする
・顔に電気が走るような強い痛みがある
といった症状を認める患者さんに対して、
微小血管減圧術が行われることがあります。
しかし、こんな疑問を持った方はいませんか?

・微小血管減圧術ってどんな手術?
・なぜ血管を移動させるの?
・術後は何を観察すればいい?
この記事では、
微小血管減圧術についてどんな手術かということから術後観察ポイントまで分かりやすく解説します!
目次
この記事でわかること
この記事を読むと以下のようなことがわかります。
・微小血管減圧術とは何?
・微小血管減圧術の適応疾患がわかる
・微小血管減圧術の手術の流れがわかる
・微小血管減圧術後の観察ポイントがわかる
・微小血管減圧術の合併症がわかる

名前からして難しそうって思いがちだけど、
一緒に勉強していこう!
微小血管減圧術とは
微小血管減圧術(MVD)とは
…脳神経を圧迫している血管を神経から離し、
神経への圧迫を解除する手術のこと
私たちの脳の周囲には、たくさんの血管と脳神経があります。
通常、血管と脳神経が存在しているだけでは問題ありません。
しかし、「何らかの原因」で
血管が脳神経に接触・圧迫することで、
神経が異常に興奮し、
痛みやけいれんなどの症状が起こることがあります。
そして「神経を圧迫している血管を神経から離す」ことで、
神経への圧迫を解除します。
これが微小血管減圧術です。

微小血管減圧術は、神経や血管を切るのではなく、
あくまで圧迫されている神経を解除するだけの手術だよ!
微小血管減圧術の適応疾患

この手術って適応疾患はなんだろう?
神経が圧迫される疾患?
微小血管減圧術は、
主に脳神経が血管によって圧迫されることで症状が起こる疾患
に対して行われます。
代表的な疾患として、以下のような疾患があります。
・三叉神経痛
・片側顔面けいれん
・舌咽神経痛 など
ここでは、脳神経病棟で特に知っておきたい2つを紹介します。
① 三叉神経痛

三叉神経痛はうちの病棟でもよくある疾患だよ!

三叉神経…国試で勉強したような…?
三叉神経は、顔の感覚を脳へ伝える神経です。
この三叉神経が血管によって圧迫されることで、

顔が痛い!!!!
と、「顔に電気が走るような激痛」
などの症状が出現することがあります。
三叉神経痛では、
薬物治療などで症状が十分にコントロールできない場合などに、
微小血管減圧術が検討されることがあります。

② 片側顔面けいれん
片側顔面けいれんは、
顔の片側の筋肉が本人の意思とは関係なく
ピクピクとけいれんする疾患です。
特に、
・目の周囲
・頬
・口の周囲
などにけいれんが起こります。
原因として顔面神経が血管によって圧迫されていることがあり、
微小血管減圧術によって神経への圧迫を解除します。

微小血管減圧術の手術の流れ
では、実際にどのように手術が行われるのでしょうか?
大まかな流れは以下のようになります。
① 全身麻酔を行う
⇒微小血管減圧術は、基本的に全身麻酔下で行われる
② 耳の後ろを切開する
⇒症状がある側の耳の後ろ付近を切開
③ 神経と血管を確認する
⇒手術用顕微鏡などを使用して、
「どの血管が神経を圧迫しているのか」を確認
脳幹周囲の重要な神経や血管が存在するため、
非常に細かな操作が必要になります。
④ 圧迫している血管を移動させる
⇒神経を圧迫している血管を神経から離す
そして、血管が再び神経に接触しないように、
血管の位置を調整する
このようにして神経への圧迫を解除する
⑤ 閉頭・閉創する
⇒神経への圧迫解除が確認できたら、
開けた部分を閉じ、皮膚を縫合して手術終了


神経の圧迫をなくすって言葉だけだと簡単だけど、
開頭するんだから思ったより大がかりだ…
微小血管減圧術の術前準備
術前準備では、一般的な全身麻酔・開頭手術に対する準備に加えて、
術後に評価する症状を把握しておくことが重要です。
① 術前の神経症状を確認する
術後の変化を評価できるように、
・意識レベル
・顔面の動き
・顔面の感覚
・聴力
・めまい・ふらつき
・三叉神経痛の程度
・顔面けいれんの頻度
などを確認しておきます。
特に、術後に顔面神経麻痺や聴力障害などが出現する可能性があるため、術前の状態を知っておくことが大切です。

患者さんのもともとの疾患から、
主訴が一体何なのか、
術前の状態を知ろう!
② 全身麻酔・手術に向けた準備
以前に全身麻酔・開頭手術に対する術前日/当日の準備について
解説した記事がありますのでそちらをご覧ください!
・脳動脈瘤クリッピング術⇓
微小血管減圧術後の観察ポイント
ここが、脳神経病棟の看護師として特に重要なポイントです。
術後は、一般的な開頭術後の観察に加えて、
「脳神経への影響が出ていないか」を意識して観察します。
① 意識レベル・神経症状・瞳孔

これは何回も今までの術後観察で出てきたね!

脳の病気っていったら基本見る観察項目だよ!
・JCSやGCSでの意識状態の評価
・運動麻痺の有無
・手足のしびれの有無
・瞳孔の大きさ
・対光反射の有無 など
を確認します。
術後に意識レベルが低下したときや瞳孔不同の場合は、
単なる麻酔の影響だけではなく、
出血・脳梗塞・脳浮腫などの合併症
も考える必要があります。
②顔面神経麻痺
微小血管減圧術では、
手術部位の近くに「顔面神経(第Ⅶ脳神経)」があります。
そのため、
・口角の下垂
・額のしわ寄せ
・閉眼できるか
・表情の左右差 など
を確認します。
特に片側顔面けいれんに対する手術では、
術後に顔面神経麻痺が生じる可能性があります。

・笑ってください
・目をぎゅっと閉じてください
など、左右差を確認できる方法を使うと分かりやすいです。
③ 聴力
微小血管減圧術では、
顔面神経の近くに「内耳神経(第Ⅷ脳神経)」があります。
そのため、
・耳の聞こえにくさ
・耳鳴りの有無 など
を確認します。
術後の合併症として、
聴力障害や耳鳴りなどが報告されています。

内耳神経は、
蝸牛神経(聴覚)と前庭神経(平衡感覚)から構成されてるよ!
④めまい・ふらつき
第Ⅷ脳神経(聴神経)への影響や、
手術部位周辺への影響によって、
・めまい
・ふらつき
・歩行障害 など
が出現することがあります。
離床時には転倒にも注意します。
特に「歩けると思っていた患者さんが、立ったらふらついた」
ということも考えられるため、
初回離床時は慎重に評価します。
⑤顔面の感覚
三叉神経痛に対する微小血管減圧術では、
・顔のしびれ
・顔の感覚低下
・顔の違和感 など
がないか確認します。
術前と比較して症状が変化していないかを見ることが重要です。

手術操作によって
まれに顔のしびれや感覚障害が生じることがあるよ!
⑥頭痛
開頭手術後なので、
「頭が痛い」という訴えは比較的よくみられます。
しかし、以下のような症状が出ると、
術後出血などの可能性も考える必要があります。
・急激に強くなった頭痛
・今までと違う頭痛
・頭痛+意識レベル低下
・頭痛+嘔吐
・頭痛+神経症状
⑦ 創部・髄液漏
術後創部については
・発赤
・腫脹
・出血
・疼痛
・浸出液 など
を確認します。
また、微小血管減圧術では髄液漏にも注意が必要です。
後頭蓋窩の手術では髄液漏が重要な合併症の一つであり、
髄液漏から髄膜炎につながる可能性もあります。

そのため、
「創部から何か出ていないか」だけではなく、
「鼻や耳から透明な液体が出ていないか」
なども確認します。
微小血管減圧術の合併症
微小血管減圧術は、神経血管圧迫を解除するための手術ですが、
脳幹周囲には重要な血管や脳神経が存在するため、
合併症に注意が必要です。
代表的なものとして、以下の7つがあります。
① 顔面神経麻痺
顔面神経への影響により、
顔面神経麻痺が生じることがあります。
特に片側顔面けいれんに対するMVDでは、
顔面神経麻痺が重要な合併症の一つです。
② 聴力障害
聴神経への影響によって、
難聴や耳鳴りなどが生じることがあります。
③ めまい・ふらつき
前庭系への影響などにより、
めまいやふらつきが生じることがあります。
④ 髄液漏
創部などから髄液が漏れることがあります。
髄液漏は、髄膜炎などにつながる可能性があるため注意が必要です。
⑤ 脳梗塞・脳出血
手術部位周辺の血管が損傷したり、
血流に影響が生じたりすることで、
脳梗塞や脳出血が起こる可能性があります。
頻度は高くありませんが、重篤な合併症となるため、
術後の意識レベルや神経症状の変化を見逃さないことが重要です。
⑥ 感染・髄膜炎
手術創の感染や、髄液漏に関連した髄膜炎が起こる可能性があります。
発熱だけではなく、
意識状態や頭痛、創部状態などを総合的に観察します。
⑦ 症状の再発
手術によって症状が改善しても、
時間が経過してから再び症状が出現することがあります。
血管と神経の位置関係や圧迫の状態などによって、
再発する可能性があります。
よくある質問
微小血管減圧術は神経や血管を切断する手術なの?
なお、微小血管減圧術は、
神経そのものを切断したり破壊したりする手術ではありません。
原因となっている血管と神経の接触を解除することで、
症状の改善を目指す手術です。
Q2.手術をすると三叉神経痛や片側顔面けいれんはすぐに治る?
多くの場合、手術後早期から痛みの改善が期待できますが、
症状の改善時期には個人差があります。
また、手術後に症状が再発することもあるため、
術後も症状の変化を観察していく必要があります。
まとめ
今回は、「微小血管減圧術(MVD)」について解説しました。
微小血管減圧術とは、
脳神経を圧迫している血管を神経から離し、
神経への圧迫を解除する手術です。
主に、三叉神経痛や片側顔面けいれんなどに対して行われます。
術後は、一般的な開頭術後の観察に加えて、
「脳神経に異常が起きていないか」という視点が重要です。
特に、神経症状や顔面神経麻痺などを確認しましょう。
微小血管減圧術では、
症状の原因となっている
「血管と神経の接触を解除する」ことが治療のポイントになります。
そのため、術後の観察でも、
単に「開頭術後だから観察する」のではなく、
「どの脳神経を治療したのか」を意識すると、
必要な観察項目が理解しやすくなります。
それではまた次回!
関連記事
今回の記事に関連する過去投稿を以下に提示します。
・脳動脈瘤クリッピング術とは?術前・術後の観察ポイント
・意識レベルの観察方法
・瞳孔の観察方法
・運動麻痺の見方






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