こんにちは!
ひめたろ🐶です。
今回は「ギラン・バレー症候群(Guillain-Barré syndrome:GBS)」について解説します!
脳神経病棟では、

・昨日まで普通に歩けていたのに、
急に足に力が入らなくなった
・両足が動かしにくくなって、
徐々に腕まで動かしにくくなってきた
という患者さんを受け持つことがあります。
ギラン・バレー症候群では、
手足の筋力低下だけでなく、
重症になると呼吸筋が麻痺して人工呼吸管理が必要になる
こともあります。
しかし、以下のような疑問を持つ人も多いのではないでしょうか?

・ギランバレー症候群ってなに?
・治療したら元に戻るのかな?
・ギランバレーって何を観察したらいいの?
この記事では、
ギラン・バレー症候群について
新人看護師さんにもわかりやすく解説していきます!
目次
ギラン・バレー症候群とは?

ギラン・バレー症候群とは
…自分自身の免疫反応によって末梢神経が障害されることで、
筋力低下や感覚障害などを起こす病気です。

免疫反応で末梢神経が障害される?
ってどういうこと?
末梢神経とは、脳や脊髄から全身に伸びている神経のことです。
私たちは、脳から出された

足を動かせ!!」
という指令を末梢神経などを通して筋肉へ伝えることで、
足を動かしています。
しかし、ギラン・バレー症候群では末梢神経が障害されるため、

足を動かそう!
と思っても、その指令が筋肉までうまく伝わらなくなります。
その結果、

手足に力が入りにくい
歩きにくい
立てない
といった症状が現れるのです。
なぜギラン・バレー症候群になるの?

ギラン・バレー症候群では、
感染症などをきっかけとして発症することがあります。
特に知られているのが、
Campylobacter jejuni(カンピロバクター)
による感染です。
カンピロバクターは、
加熱が不十分な鶏肉などから感染することがあります。

うちの病棟でも
生焼けの鶏肉や手羽先でギランバレーになったって
患者さんは多いよ!
そのため、
「生の鶏肉を食べたからギラン・バレーになった」というより、
「カンピロバクターなどの感染をきっかけに、
免疫反応が末梢神経を攻撃してしまうことがある」
と理解しておきましょう。
カンピロバクター以外にも、
・サイトメガロウイルス
・EBウイルス
・マイコプラズマ
・インフルエンザ など
さまざまな感染症が先行することがあります。
【下肢筋力低下が多い!】ギラン・バレー症候群の主な症状

ギランバレーの代表的な症状
⇒筋力低下
特に、両下肢から始まる筋力低下が典型的
例えば、

・なんだか足に力が入らない……
・歩きにくくなってきた
・階段を上るのが難しい
といった訴えが出ることがあります。
そこから症状が進行すると、
下肢 → 体幹 → 上肢
と筋力低下が広がっていくことがあります。
ただし、すべての患者さんが同じ経過をたどるわけではありません。
軽症で、下肢の筋力低下を中心に回復していく患者さんもいれば、
重症化して全身の筋力低下や呼吸筋麻痺を起こす患者さんもいます。

患者さんによって重症化するかどうかは本当にまちまち!
また、診察では膝蓋腱反射などの腱反射が弱くなったり
消失したりすることも特徴だよ!
症状は発症後数日〜2週間ほどで進行し、
その後は回復期へ向かうことが多いです。
「足が動かない」だけではない!ギラン・バレー症候群の他の症状
ギラン・バレー症候群では、筋力低下だけでなく、
・しびれ
・感覚障害
・神経障害性疼痛
・筋肉痛
・顔面神経麻痺
・嚥下障害
・構音障害
などがみられることがあります。
また、自律神経障害が起こることもあります。

自律神経障害ってなんだっけ…?

自律神経障害とは、血圧・心拍・発汗・排尿など、
体の機能を自動的に調整する
自律神経がうまく働かなくなる障害だよ!
自律神経が障害されることで
以下のような症状が見られることがあります。
・血圧の変動
・頻脈・徐脈
・不整脈
・発汗異常
・排尿障害 など
がみられることがあります。
そのため、
「足が動かない患者さん」だけとして捉えないことが重要です。
全身状態を観察する必要があります。

しばしば嚥下障害が起こって
経管栄養を開始する患者さんがいたり、
構音障害で話したいことも
話せない患者さんがいたりするよ!
都度患者さんの症状に合わせて看護する必要があるね
ギラン・バレー症候群で特に注意したい「呼吸筋麻痺」
新人看護師さんが特に覚えておきたいのが、呼吸筋麻痺です。
ギラン・バレー症候群では、
病状が進行すると呼吸に必要な筋肉まで麻痺することがあります。

これが一番怖いんだよ⋯
呼吸筋が十分に動かなくなると、
自力で十分な換気ができない状態になります。
重症例では、自発呼吸が徐々に弱くなり、
十分な換気ができなくなって挿管し、
そして 人工呼吸器管理が必要になることがあります。
さらに、気管切開を行う患者さんもいます。
そのため、「SpO₂が正常だから大丈夫」とは限りません。
呼吸状態の悪化を早期に発見することが非常に重要です。
嚥下障害にも注意!
ギラン・バレー症候群では、
嚥下に関係する筋肉が障害されることがあります。
そのため、

・水を飲むとむせる
・唾液が飲み込めない
・声が濡れたようになった
などの変化がみられる場合があります。
嚥下機能が低下している患者さんでは、
誤嚥性肺炎や窒息のリスクにも注意が必要です。
呼吸筋だけでなく、
嚥下機能も呼吸状態に影響することを覚えておきましょう。

誤嚥性肺炎になると、更に全身状態悪くなるから
回復にもさらに時間かかるし最悪です。
ギラン・バレー症候群と脳卒中の違い

手足が動かなくなるっていうと、麻痺?
麻痺っていうと脳卒中のイメージがあるなあ
このように思う看護師さんも多いと思います。
しかし、ギラン・バレー症候群と脳卒中では特徴が異なります。
例えば
脳卒中の症状
⇒右脳の障害から左半身麻痺が出現するように、
片側に麻痺が出る
ギラン・バレー症候群の症状
⇒左右対称性に筋力が低下する
例えば、ギランバレー症候群は
「右足だけ動かしにくい」というより、
「両足が同じように動かしにくくなってきた」
という経過をたどることがあります。
ただし、実際の患者さんでは症状が典型的とは限らないため、
左右差だけでギラン・バレー症候群と判断することはできません。
意識障害は起こる?
ギラン・バレー症候群では、
典型的には意識障害は起こらない。
つまり、「手足がほとんど動かない」「声が出しにくい」
という状態でも、
「意識ははっきりしている」のです。
新人看護師さんにとっては、ここも重要なポイントです。
「動けない=意識も悪い」とは限りません。
患者さんが意思表示できない場合でも、
・眼球運動
・表情
・文字盤
・ナースコール
などを活用し、意思疎通の方法を確保することが大切です。
特に人工呼吸器を装着している患者さんでは、
話すことができなくなるため、
コミュニケーション方法の工夫が必要になります。

ギランバレーって自分で動けないし、
呼吸も自分でしづらい状況になるかもしれないのに
意識がある状態が多いって…
患者さんにとっては結構辛い状況だよね

患者さん本人からしたら
何よりも不安だし恐怖だよね…
状態によっては命の危険もあるから
患者さんの気持ちに寄り添った看護が必要になるよ
【免疫の働きを抑える!】ギラン・バレー症候群の治療
ギラン・バレー症候群の代表的な治療
⇒免疫グロブリン大量静注療法(IVIg)や、
血漿交換療法が行われる
また、呼吸状態が悪化した場合には人工呼吸管理を行うなど、
症状に応じた治療が必要になります。
急性期を乗り越えた後は、
リハビリテーションも重要になります。

IVIg?血漿交換療法?
それってなに?
IVIg(免疫グロブリン大量静注療法)
免疫グロブリンを点滴で投与し、
異常な免疫の働きを抑える治療です。
数日間かけて点滴を行うことが多く、
ギラン・バレー症候群でよく行われる治療の一つです。
血漿交換療法
血液中の神経を攻撃する物質を取り除き、
新しい血漿などと入れ替える治療です。
専用の機械を使って血液を体の外で処理し、
有害な免疫物質を減らすことで症状の改善を目指します。

どちらも神経を攻撃する免疫の働きを弱めるための治療
であることに変わりはないよ
回復には時間がかかることもある
ギラン・バレー症候群は、回復が期待できる病気ですが、
回復速度には大きな個人差があります。

比較的早く回復する患者さんもいれば、
重症化して数か月から1年以上かけて徐々に回復していく
って患者さんもいるよ!
また、「歩けるようになったから完全に治った」とは限りません。
筋力低下やしびれ、疲れやすさなどの症状が残ることもあります。
そのため、患者さんにとっては、

いつになったら元の生活に戻れるんだろう……
という不安を抱える時期が長くなることがあります。
看護師としては、身体面だけでなく、
長期的な心理面への支援も大切になります。
新人看護師が観察したいポイント
ギラン・バレー症候群の患者さんを受け持ったら、
まずは以下のようなポイントを意識しましょう。
① 【重要】筋力の変化
ギランバレーの主症状である筋力低下の程度は観察必須です。
・昨日と比べて動きに変化はないか
・下肢から上肢へ筋力低下が進行していないか
・握力や下肢の動きに変化はないか
・ADLが低下していないか
「昨日はできていたことが、今日はできなくなっていないか」
という視点が重要です。

うちの病棟では、
日々MMTの評価を行って運動機能をみることが多いよ!
MMTの評価についてはまた別の記事で解説していきます!
② 【最重要】呼吸状態の変化
先ほども話した通り、
ギランバレーでは呼吸筋麻痺になる可能性もあります。
そのため、以下のような呼吸状態を日々観察していくことも必須です。
・呼吸数
・SpO₂
・呼吸パターン
・呼吸苦
・咳嗽できるか
・痰の喀出ができるか
・声の変化
特に呼吸筋麻痺の進行がないかを意識します。

しばしば痰の喀出ができなくなって
痰づまりで呼吸状態悪化する人もいます。
日々観察が必要だ!
③ 【重要】嚥下状態
STさんと協力して嚥下状態も日々見ていく必要があります。
嚥下ができないと、唾液によるむせが出てきたり
それによる誤嚥性肺炎も起こす可能性があります。
以下のような観察を行う必要があるのです。
・飲水や唾液によるむせ
・咳嗽の有無(湿性咳嗽かどうかも評価)
・唾液を飲み込めるか
・声の変化
⇒飲み込みによる声の変化では誤嚥による嗄声の可能性あり!
・食事摂取状況
⇒飲み込めないと食事摂取が進まない可能性あり!

肺炎には要注意!
④ 自律神経症状の有無
また、ギランバレーでは自律神経障害が起こることもあります。
・血圧変動の有無
・脈拍の変化
・不整脈の有無
・発汗の有無
・排尿状態 など
にも注意します。
⑤ 疼痛・しびれ
筋力低下だけではなく、
・四肢の疼痛やしびれ
・疼痛やしびれの程度
の訴えがないか確認します。

四肢を動かせない患者さんも多いから、
寝たきりだと腰痛を訴えることが多いんだ!
湿布など鎮痛薬の使用や定期的な体位交換が必要になるよ!
⑥ 心理面の変化
突然身体が動かなくなり、
さらに回復まで長期間かかることがあります。
そのため、

・このまま歩けなかったらどうしよう
・仕事に戻れるのかな
など、不安を抱えている患者さんもいます。
患者さんの気持ちを確認しながら、
リハビリや日常生活への意欲を支えていくことも
看護師の重要な役割です。
【ひめたろ実体験】ギラン・バレー症候群にかかった患者さんへの看護

何人かギラン・バレー症候群で入院してきた人はいるけど、
一番症状が重かった患者さんの実例を挙げるよ!
患者さんを患者Aとします。
Aさんは生の鶏肉であることを知らずに食べてしまい、
食中毒のちに四肢麻痺も患い、
ギラン・バレー症候群として
うちの脳神経病棟へ入院してきました。
当初は嚥下ができていたので
四肢麻痺のため全介助でしたが、食事はとれていました。

話すことが好きだからまだ話せるだけよかった
体が動かないのはつらいけど⋯
とAさんは話していました。
しかし、治療とリハビリを行ってきましたが、
呼吸筋麻痺が進行し重症化。
呼吸状態悪化でICUへ入室する事態となりました。
呼吸状態改善のために挿管、気管切開も行い、
呼吸状態は安定し、脳神経病棟へ戻ってきました。
しかし、Aさんはもともと「しゃべることが好き」だったのに
気管切開でしゃべることができなくなりました。
文字盤にてこのように話します。

(喋ることができないのが辛い。
喋りたい)
どうにかAさんの「喋りたい」という思いを叶えたい。

当時は先輩看護師たちや担当医師、STさんと
どうにかAさんが気管切開から卒業できないか試行錯誤したよ
STさんと協力して直接・間接嚥下訓練を行って
発声・嚥下の体操を行ったり、
気管切開チューブをスピーチカニューレにして
短時間でも発声できないか工夫を凝らしました。
スピーチカニューレを導入するとすぐ痰が溜まりやすいですが、
短時間でも発声できるのでAさんは

あーー(発声練習)。
うれしい。
久しぶりに声が出せた
と涙を流しました。
呼吸状態悪化で話すことができなくなってから
約数ヶ月ぶりの発声でした。

のちにスピーチカニューレの導入時間を長くしていき、
ほぼ1日スピーチカニューレで過ごせるようになったよ
その後、リハビリ目的で他病院へ転院となりました。

一時は命の危険をさまよったし、
Aさんにとっては話せないという絶望を味わったけど、
試行錯誤を行った結果いい方向へ進んだという事例だったなあ
患者さんの尊厳や思いを尊重するために私たちに何ができるか、
考えて行動した良い事例でした。
※気管切開チューブについての記事はこちら。
よくある疑問
Q1.ギラン・バレー症候群は治る病気ですか?
多くの場合、回復が期待できます。
ただし、回復まで数か月〜1年以上かかることもあり、
重症例では筋力低下やしびれなどの症状が残る場合もあります。
Q2.ギラン・バレー症候群は再発しますか?
ギラン・バレー症候群は、
基本的には再発を繰り返す病気ではありません。
何度も同じような症状を繰り返す場合には、
慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチー(CIDP)など、
別の疾患も考える必要があります。
Q3.ギラン・バレー症候群では痛みもありますか?
あります。
筋肉痛やしびれ、神経障害性疼痛などを伴う患者さんもいます。
そのため、「麻痺がある=痛みはない」とは限りません。
疼痛の程度や部位、性状を確認することが大切です。
Q4.ギラン・バレー症候群では意識障害も起こりますか?
典型的には、意識は保たれます。
手足が動かしにくくなったり、
重症化して人工呼吸器が必要になったりしても、
患者さん自身は意識がはっきりしている場合があります。
そのため、意思疎通が難しい患者さんに対しても、
コミュニケーション方法を工夫する必要があります。
Q5.なぜ呼吸状態を注意して見るのですか?
ギラン・バレー症候群では、
呼吸筋まで麻痺することがあるためです。
重症化すると人工呼吸管理が必要になる場合があります。
そのため、SpO₂だけを見るのではなく、
呼吸数や呼吸パターン、咳嗽力、痰の喀出状況、
声の変化などを含めて観察します。
Q6.リハビリをすればすぐに歩けるようになりますか?
回復速度には個人差があります。
軽症例では比較的早く回復することもありますが、
重症例では数か月〜1年以上かけてリハビリを続けることもあります。
患者さんにとって長い戦いになることもあるため、
身体機能だけでなく心理面への支援も重要です。
Q7.ギラン・バレー症候群と脳卒中は何が違いますか?
どちらも「手足が動かしにくい」という症状が出ることがあります。
脳卒中では、
脳の障害部位によって片麻痺などの左右差が出ることが多いです。
一方、ギラン・バレー症候群では
左右対称性の筋力低下が特徴の一つです。
ただし、症状だけで自己判断することはできません。
「いつから、どのように症状が進行したのか」を確認することが重要です。
Q8.ギラン・バレー症候群は感染しますか?
結論、ギラン・バレー症候群そのものは
人にうつる病気ではありません。
ただし、きっかけとなる感染症(カンピロバクターなど)は
感染対策が必要になる場合があります。

日頃より、鶏肉はよく焼きましょう!
まとめ
今回は、ギランバレー症候群について解説しました。
ギラン・バレー症候群は、
免疫反応によって末梢神経が障害され、
筋力低下などを起こす病気です。
先行感染としてカンピロバクターなどが知られています。
症状は、両下肢の筋力低下から始まり、
重症になると上肢・顔面・嚥下筋・呼吸筋などへ障害が広がることがあります。
特に新人看護師さんが覚えておきたいのは、
「ギラン・バレー=足が動かない病気」ではないということです。
筋力低下だけでなく、
呼吸状態や嚥下状態、心理面なども含めて観察する必要があります。
そして、ギラン・バレー症候群は
回復まで長い時間がかかることがあります。
患者さんにとっては、
昨日までできていたことが突然できなくなり、
さらに「いつ元に戻れるのかわからない」という不安を抱えることもあります。
だからこそ看護師は、急性期の状態変化を見逃さないだけでなく、
患者さんが長いリハビリを乗り越え、
少しずつ生活を取り戻していけるよう支えることも大切です。
「足が動かない」だけを見るのではなく、
「この患者さんの神経症状が今どう変化しているのか」を見る。
これが、ギラン・バレー症候群を看護するうえで大切な視点です。
それではまた次回!
参考文献
・日本神経学会「ギラン・バレー症候群,フィッシャー症候群診療ガイドライン2024
https://neurology-jp.org/g日本神経学会「ギラン・バレー症候群,フィッシャー症候群診療ガイドライン2024uidelinem/pdf/gbs_2024_01.pdf
・東海大学医学部付属八王子病院看護部:本当に大切なことが一冊でわかる脳神経,照林社,2024


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