こんにちは!
ひめたろ🐶です。
今回は、聴神経腫瘍摘出術について解説します!
脳神経外科では、
聴神経腫瘍に対して腫瘍を摘出する手術が行われることがあります。
聴神経腫瘍摘出術後の患者さんを受け持つと、

頭が痛い……
気持ち悪い
目が回る
立つとふらふらする
などの訴えがみられることがあります。
特に、聴神経腫瘍摘出術では術後のめまいや嘔気・嘔吐が強くなることがあるため、
看護師としては注意して観察する必要があります。
しかし、こんな疑問を持つ人も多いのではないでしょうか?

・なぜ術後にめまいが起こるの?
・嘔気・嘔吐が強いのはなぜ?
・術後は何を観察すればいい?
・どんな合併症に注意すればいい?
この記事では、
聴神経腫瘍摘出術の概要から、
手術の流れ、術後の観察ポイント、注意したい合併症について解説します。
目次
この記事でわかること
この記事を読んでわかることは、以下の通りです。
・聴神経腫瘍とは何かがわかる
・聴神経腫瘍摘出術を行う目的を理解できる
・聴神経腫瘍摘出術の流れを知ることができる
・術前準備や術後観察ポイントがわかる
・術後にめまいや嘔気が起こる理由がわかる
・注意したい合併症について理解できる
それでは早速解説していきます!
聴神経腫瘍摘出術とは?
聴神経腫瘍摘出術とは?
…全身麻酔下で聴神経腫瘍を手術によって摘出する治療のこと
聴神経腫瘍は良性腫瘍ですが、
腫瘍が大きくなると周囲の神経や脳幹を圧迫する可能性があります。
そのため、腫瘍の大きさや増大の程度、症状、
患者さんの年齢や全身状態などを考慮して治療方針が決定されます。
治療には経過観察や放射線治療などもありますが、
手術による摘出が選択される場合があります。
聴神経腫瘍摘出術を行う目的
先ほど、聴神経腫瘍が大きくなると周囲の神経や脳幹を圧迫すると言いました。
つまり、この摘出術の目的は…
聴神経摘出術の主な目的
…腫瘍を摘出し、腫瘍による周囲の神経や脳幹への圧迫を解除すること
しかし、聴神経腫瘍の周囲には重要な神経が存在しています。
特に、
・顔面神経
・蝸牛神経
・前庭神経
などが腫瘍と近接しています。
そのため、単純に腫瘍をすべて摘出するだけではなく、
周囲の神経機能を可能な限り温存することも重要になります。

聴神経腫瘍摘出術について
なんとなくわかったところで、
ではこの適応疾患である
「聴神経腫瘍」について解説しましょう!
【適応疾患】聴神経腫瘍とは?
聴神経腫瘍摘出術の適応疾患はもちろん、
聴神経腫瘍です。

聴神経腫瘍ってなんだろう?
聴神経腫瘍とは?
…主に前庭神経を構成するシュワン細胞から発生する良性腫瘍のこと。
「前庭神経鞘腫(ぜんていしんけいしょうしゅ)」とも呼ばれる

あれ?
聴神経ではなく前庭神経が急に出てきたぞ?
どういうこと?
第Ⅷ脳神経(内耳神経)は前庭神経と蝸牛神経の2つで構成されています。
【聴神経】
・前庭神経とは?
…耳の奥にある内耳から脳へとつながっている神経。
身体のバランスを保つために重要な役割がある。
・蝸牛神経とは?
…前庭神経とともに走行する神経。
音を脳へ伝える働きがある。
そのため、そんな聴神経に聴神経腫瘍ができると、
以下のような症状が出るのです。
・難聴
・耳鳴り
・めまい
・ふらつき など…
腫瘍が大きくなると、
周囲にある顔面神経や小脳、脳幹などを圧迫し、
顔面神経麻痺や歩行障害などの症状が出現することもあるのです。


私の経験上、
患者さんの主訴として
めまいや片側の難聴が多いイメージだよ。
聴神経腫瘍摘出術の流れ
ここでは、手術での一般的な流れについて解説します。
※実際の手術内容や入院経過は、
腫瘍の大きさや手術方法、施設によって異なります。
① 全身麻酔・体位固定・気管挿管
② 頭蓋骨を開ける(後頭部などを切開)
③ 腫瘍を確認する
⇒顕微鏡などを使用して腫瘍を確認
⇒周囲にある顔面神経・聴神経系などの重要な神経を確認しながら操作
④ 腫瘍を摘出する
⇒腫瘍を周囲の組織から慎重に剥離
⇒神経へのダメージを避けるため、
状況によっては腫瘍を一部残すこともある
⑤ 止血・閉創
⑥ 手術終了
(⑦ICUで全身状態管理)
(⑧状態安定したのちに一般病棟へ転棟)

私の病院では、術後はICUやHCUなどで管理した後、
状態が安定すれば一般病棟へ移ります。
施設によっては、
術後早期から一般病棟で管理する場合もあるから、
そこは施設のルールに従ってね!

術前の準備
手術を受ける前に、
患者さんの全身状態や神経学的な状態を確認します。
主な検査として、
・MRI
・CT
・聴力検査
などが行われます。
また、手術や全身麻酔に必要な検査として、
血液検査や心電図、胸部画像検査などが行われることもあります。
術前には、
患者さんのもともとの聴力や顔面神経の状態などを確認しておくことも重要です。

術前術後の比較のために、
患者さんの状態を見るっていうのが大事だよ!
その他、開頭手術前の術前準備については
過去の投稿で詳細に解説した章がありますので、
そちらをご覧ください!
・脳動脈瘤クリッピング術⇒ https://x.gd/wEjCe
【重要】聴神経腫瘍摘出術後の観察ポイント7つ!
それでは聴神経腫瘍摘出術後の観察ポイントについて見ていきましょう!
① 【重要】神経症状の変化
今までの術後観察でも何度も出てきましたが、
神経症状の観察は必須です。
・意識状態の変化
・瞳孔の大きさや対光反射の有無
・運動麻痺の有無
意識障害や新たな麻痺などを伴っている場合には、
頭蓋内出血や脳浮腫などの可能性も考えます。
② 【重要】頭痛
術後には創部痛などによる頭痛がみられることがあります。
頭痛の程度だけではなく、
・急激に悪化していないか
・今までとは違う痛みではないか
・嘔吐を伴っていないか
・神経症状を伴っていないか
突然の頭痛や嘔吐、麻痺、意識障害などがあれば、
術後出血や脳浮腫などの可能性を考え、
速やかに担当医師に報告します。
③【重要】めまい
聴神経腫瘍摘出術後では、めまいの観察が特に重要です。
「めまいがあります」と訴えている場合には、
・安静時にもあるのか
・体位変換で悪化するのか
・座位を保持できるか
・立位が可能か
・歩行できるか
などを確認します。

術後にめまい・嘔気や嘔吐があるってことは
手術による前庭機能への影響が関係している場合があるよ
よく観察しよう
④【重要】嘔気・嘔吐
嘔気・嘔吐の程度や回数も確認します。
また、以下のことも確認します。
・めまいと同時に起こっているか
・頭痛を伴っているか
・意識状態に変化がないか
⑤【重要】顔面神経麻痺
聴神経腫瘍の近くには顔面神経が走行しているため、
術後は顔面神経麻痺に注意します。
観察するポイントは、以下のとおりです。
・口角の左右差
・額のしわ寄せ
・笑ったときの左右差
・閉眼できるか など
特に閉眼できない場合には、
角膜が乾燥して角膜障害を起こす可能性があります。

閉眼できない場合は角膜の乾燥を防ぐために
医師から目薬が処方されることもあるよ!
⑥ 聴力の変化
術後に聴力が変化していないかも確認します。
患者さん自身に、
「手術前と比べて聞こえ方に変化はありませんか?」
などと確認することも大切です。

聴神経腫瘍術後の特有な観察ポイントだから
術後評価として必ず聞いていこう!
⑦歩行・ふらつき
術後はめまいや平衡機能の低下によって、
転倒リスクが高くなることがあります。
特に初回離床時は、
「座れたから立てるだろう」
と考えず、患者さんの状態を確認しながら慎重に離床します。

初回離床では、必ず患者さんを支えながら離床を行ってね!
聴神経腫瘍摘出術後に注意したい合併症5選
それではここで聴神経腫瘍摘出術で
特に注意したい合併症を紹介しましょう!
①術後出血・頭蓋内合併症
聴神経腫瘍摘出術後には、
術後出血や脳浮腫などの頭蓋内合併症に注意する必要があります。
特に、以下のような変化が見られたら注意です。
・突然、強い頭痛が出現・増悪する
・嘔吐を繰り返す
・意識レベルが低下する
・新たな麻痺が出現する
・瞳孔不同や対光反射の変化がみられる
・けいれんが起こる
けいれん対応や、対光反射の消失や瞳孔不同について、
過去投稿でも解説していますので、
ぜひご覧ください!
この記事の最後の章である「関連記事」にURLを添付しておきます。
②顔面神経麻痺
顔面神経麻痺が生じると、以下の症状が出てきます。
・口角下垂
・閉眼障害
・表情の左右差 など
特に閉眼障害がある場合には角膜障害に注意します。
③聴力障害
手術により蝸牛神経が損傷すると、
聴力が低下する可能性があります。
術前の聴力と比較し、術後に変化がないか確認します。
④髄液漏
聴神経腫瘍摘出術後では、髄液漏に注意します。
手術により、頭蓋骨を開けて腫瘍を摘出するため、
手術部位によっては髄液が漏れ出す経路ができる可能性があります。
髄液漏では、以下の所見が見られることがあります。
・創部から透明な液体が出ている
・鼻から透明な液体が流れる
・耳から透明な液体が流れる
髄液漏が疑われる場合には、
髄膜炎につながる可能性もあるため、担当医師へ報告します。
⑤髄膜炎
髄液漏などをきっかけとして、髄膜炎を起こす可能性があります。
以下の症状の出現に注意です。
・発熱
・強い頭痛
・項部硬直
・意識障害
・嘔吐
【実体験】ひめたろが聴神経腫瘍術後の患者さんに対してどのように看護する?

私の病棟でも聴神経腫瘍術後の患者さんを受け持つことが
しばしばあるよ
そんな頻繁でもないけどね
実際、術後は結構な患者さんが
めまい・嘔吐を引き起こすことが多い印象です。

うう⋯気持ち悪い⋯
吐きそう⋯
そのため、離床や食事が進まないという問題が生じます。

ただやっぱり離床が進まないと
廃用症候群とか良くない方向にいってしまうし、
食事も進まないと
必要な栄養・水分を経口から確保できず、
点滴が長引いちゃうんだよなあ⋯
そのため、私は離床と食事を進めるために
離床・食事の30分前くらいに制吐剤を投与するようにしています。
もちろん担当医師の指示にしたがって、ですよ?
そうするとちょうど制吐剤が効き出した頃に、
離床や食事を促すと
患者さんもちょっとは楽な状態でできるかなと考えています。

気持ち悪いのはそうだけど、
薬使わないよりはマシかな?
このように話して離床、食事を行う患者さんが多いですね。

患者さんの辛い症状を制吐剤を使用して
できるだけ抑えた状態で離床や食事を進めたいね!
聴神経腫瘍摘出術に関するよくある質問6つ!
それではここで、聴神経腫瘍摘出術でよくある質問に答えましょう!
Q1.なぜ術後にめまいが起こるの?
聴神経腫瘍摘出術後では、
強いめまいがみられることがあります。
その理由の一つが、「前庭神経や前庭機能への影響」です。
前庭神経は、身体の傾きや動きを感知し、
平衡感覚を保つために重要な役割を担っています。
手術によって前庭神経の機能が低下すると、
左右の前庭機能に差が生じることがあります。
すると脳が身体の動きを正しく認識できなくなり、

身体が動いている!!
周囲が回っている??
といった感覚が生じ、強いめまいにつながることがあります。
そのため、術後はベッド上では比較的落ち着いていても、
起き上がったり立ち上がったりしたときに
強いめまいが出現することがあります。
Q2.なぜ術後に嘔気・嘔吐が起こるの?
強いめまいが起こると、
それに伴って嘔気・嘔吐が生じることがあります。
また、手術後は麻酔薬や鎮痛薬などの影響によって
嘔気が起こることもあります。
そのため、
「嘔気=麻酔の影響」
と決めつけるのではなく、
めまいの程度や神経症状、頭痛なども合わせて観察することが重要です。

嘔吐が続く場合には、
脱水や電解質異常につながる可能性だけではなく
嘔吐によって頭蓋内圧が上昇する可能性もあるんだ
主治医に報告し、制吐剤の使用を主治医と検討しよう!
Q3.聴神経腫瘍は悪性腫瘍?
結論、聴神経腫瘍は、一般的には良性腫瘍です。
ただし、腫瘍が大きくなると周囲の神経や脳幹などを圧迫する可能性があります。
そのため、良性だから必ず治療が必要ないというわけではありません。
Q4.聴神経腫瘍があると必ず難聴になりますか?
必ずしもそうではありません。
腫瘍の大きさや位置などによって症状は異なります。
難聴や耳鳴りなどがみられることがありますが、
無症状で検査によって偶然発見されることもあります。
Q5.顔面神経麻痺は治りますか?
顔面神経麻痺の程度や原因によって経過は異なります。
一時的な麻痺の場合もあれば、長期間症状が残る場合もあります。
そのため、術後の顔面神経の状態を継続して観察することが重要です。
Q6.術後はすぐに歩けますか?
患者さんの状態によって異なります。
特に術後はめまいやふらつきが強くなることがあるため、
初回離床では転倒に注意します。
ベッド上で問題がなくても、
座位や立位になることでめまいが強くなることがあります。
まとめ
今回は、聴神経腫瘍摘出術について解説しました。
聴神経腫瘍は、主に前庭神経から発生する良性腫瘍です。
腫瘍が大きくなると
周囲の神経や脳幹などを圧迫する可能性があるため、
患者さんの状態に応じて手術による摘出が行われます。
聴神経腫瘍摘出術後では、以下の症状が出現することがあります。
・頭痛
・めまい
・嘔気・嘔吐
・聴力障害
・顔面神経麻痺
・嚥下障害
・ふらつき など
特に、前庭機能への影響によって
強いめまいや嘔気・嘔吐がみられることがあるため、
患者さんの苦痛にも配慮しながら観察することが大切です。
一方で、術後の症状だからといってすべてを「手術の影響」と判断するのではなく、
意識レベル・瞳孔・麻痺・嚥下・発語などの神経学的所見と合わせて、
時間経過による変化を観察することが重要です。
また、めまいやふらつきによる転倒、髄液漏、髄膜炎、
顔面神経麻痺による角膜障害などにも注意しましょう。
それではまた次回!
関連記事
・脳動脈瘤クリッピング術⇒ https://x.gd/wEjCe
・けいれん対応⇒ https://x.gd/MDbBq
・対光反射がないのはなぜ?⇒ https://x.gd/XRoWO
・共同偏視が起こるのはなぜ?⇒ https://x.gd/MDbBq
・瞳孔の見方⇒ https://x.gd/lbI57
・意識状態の見方⇒ https://x.gd/LEFi2
・運動麻痺の見方⇒ https://x.gd/EZkiv
参考文献
・耳鼻咽喉科・頭頸部外科,聴神経腫瘍,97巻,5号
https://webview.isho.jp/journal/detail/abs/10.11477/mf.091434910970050071?p=firstTab
・東海大学医学部付属八王子病院:本当に大切なことが1冊でわかる脳神経,照林社,2024.


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